捨て犬
第20章 涙出てきちゃいました
パン屋を出たのは
もう9時を過ぎていた
土産にもらった
ケーキを持って
エミと歩いて帰る
エミの右手は
俺のポッケの中で
エミの左手は
エミのコートのポッケの中
カッコつけて
大丈夫だからって
俺はケーキを右手で
持っていたけど
右手が寒くて
凍りそうだ
「エミ
俺のサンタ、そんなに
可笑しかったか?」
エミは
すこ~しだけ
歯を見せて
ニッコリ笑って
俺の顔を見上げた
悪くねぇ
「やっぱ可笑しかった?」
「うん」
「そ~かぁ〜
そっか、そっかぁ~
そっかそっかそっか~」
もう、たまんねぇ
エミが笑ってくれるなら
俺、なんでもしてやりたい
愛おしさが
止まらない
「寒いから
家に帰ったら
すぐに風呂にはいろ~な?」
「うんっ。
あ・・・」
「どした?」
「まだ・・・」
「あっ、え~~~~っ!
もう、いいじゃ~~ん
大丈夫だって!
俺、めっちゃ
一緒に入りてぇのに~」
「ごめんね?」
「だってだって
エミが笑った記念なんだぜ?
俺、ぜんっぜん
気にしねぇからぁ~~」
「でもぉ・・・」
「だめ?」
「だめ」
ぐすん