方位磁石の指す方向。
第9章 scene 8
「俺さ、お前と付き合うの飽きたわけ。」
「へっ…!?」
「いちいち会って顔みんのも
めんどくさいしさ、」
「なっ、なに言って…は?」
ぎゅううって痛いくらいに
抱き締められて。
…ほんと、理解できない。
「わかんない…?」
「俺と、別れたいってこと?」
「ぶふっ…違う違う!
…高校卒業したら、結婚しよ。」
「は?」
だから、話早いってば…
「一緒に暮らせば、
毎日顔見れるし、
いちいち会う必要もない。
…だから結婚した方が
手っ取り早くね?ってこと。」
「……ん、」
「理解した?」
「…うん、でも…俺は、
…わかんない、し。」
「…まだ焦んなくていいよ。
ふふ、ごめんな? 」
優しくぎゅってまた抱き締めて、
額にキスしてくれた。
…そりゃあ俺だって
一緒にいたいけどさ。
親に言うのはちょっと気が引ける
っていうか、なんていうか。
まあとにかく、
同性ってことで壁は厚いし。
「…俺も好きだし、
ずっと一緒にいたいけど、
結婚は多分…ダメ、だよ。」
「なんで?」
「同性、だし…」
「それだけじゃん?
今すぐになんて言ってないし、
二宮が一緒にいてくれるなら、
そのときでいいから。」
「…うん。」
嬉しくなったから、
お返しに抱き締め返してやった。