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僕の大事な眼鏡さん。

第1章 誰か好きな人はいますか?

 僕は大学一年生。

 ど田舎から、大都会に引っ越してきた。独り暮らしを始めて1ヶ月。

 今まで家では、何もしてこなかった生活力ゼロの割には掃除、洗濯、料理とこなせてる…と、思う。

 バイトもはじめた。喫茶店「あんじゅ」。

 時給も良いし、まかないもある。店長も優しいし、料理も旨い。

 午前中に講義が終われば、即行ランチの手伝いに向かう。

「秀太ー。すまん、急いでオーダー。」

 店に着くなり、店長の第一声。

 店の中はランチ戦場真っ只中。

 接客のバイトの絵里ちゃんと美佳ちゃんはてんやわんや。厨房の店長とめいちゃんは、フライパンや皿をバタバタと振り回している。

 急いで、控え室に入りギャルソンエプロンをして、店内に出る。

 時間は十二時十分。

 近所のオフィスビルから、昼飯を食いに人がゾロゾロ出てくる。

 十席のテーブルと八席のカウンターはあっという間に埋まってしまう。

 そんな中、一人だけいつものカウンター席に座る人がいる。

 その人はいつも、日替わりパスタにアイスティー。デザートはオレンジシャーベットをチョイスする。

 周りのサラリーマンやOLは慌ただしく食事をして店を飛び出すのに、この人は食事の後に持ってきたハードカバーの小説を読み出す。

 最初はカウンターのはじっこでも、邪魔だな…と思ってた。
 このくそ忙しいのに、悠々と本なんか読んじゃってさ。
 食ったら、さっさと帰れよ…なんて、心の中で悪態ついてた。

 でも、ある日その人は眼鏡をかけてきたんだ。

 良く見ると、左目が赤くなっていて痛々しい。

「あれ、お客さん。今日は眼鏡なんですね?」

 ちょっと、手があいた時、店長がその人に声をかけていた。

「あ、はい。いつもコンタクトレンズなんですけど、傷つけてしまって。コンタクト禁止になってしまって。」

 店長に向かって話しかけてる姿に、思わずガン見してしまっていた。

 あ、あれ?

 あんなに、可愛いかったっけ?

 いつも、一人で黙々と食べて本読んでるだけなのに。

 うわぁ。めちゃくちゃ、可愛い。

 ヤバイ。どストライク。

 赤い縁の眼鏡に、その笑顔。

 赤い縁の眼鏡に、その声。

 赤い縁の眼鏡に、その視線。

 いったい、どうしたんだろう。この人を見るだけで、胸がこんなにドキドキしてる。

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