テキストサイズ

びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂


痛ってぇ…

目が覚めると、頬に感じたのは湿った土のザラツキ
横たえていた半身を起こすとそこは空き地で
視界には敷地の境界線に張られたロープと【売地】の立看板が飛び込んできた


「嘘… だって、ココ…」


間違いない
ここはついさっきまであの飴玉屋が建っていた場所
ってことは…

周りをグルッと見渡せば
近くに見える信号は青、黄、赤の順に並んでいる
もちろん雪だって降ってない

嘘だ…


「嘘だ!!!」


ちゃんと願ったのに
潤くんとずっと一緒に居たいって願ったのに
なんで潤くんの居る世界に行けてないんだよ!
飴玉屋は
伊勢貝さんは何処に行っちゃったんだよ…!
どんな願いでも叶う飴玉なんだろ?
約束したんだよ、ずっと一緒に居るって…


「クソッ…!」


唇をギリッと噛むと
鉄の味がした






「何やってるんですか? そこ、立ち入り禁止ですよ」

「すみません、今出ます…」


警備員らしき、ヘルメットのオジサンに声をかけられ
覚束ない足取りでその場を後にした

いつものコンビニの、いつものATM
ちょっとエッチな店の下品な客引き


「お兄さ〜ん! イイ娘居ますよ!」

「悪いけど興味無いんで…」






酷いよ、伊勢貝さん
『末永くお幸せに』なんて言っといて
そんなのないよ
3万円払ったじゃん
願い事だって
ちゃんと飴玉を舐め終える前に言ったよ?
それとも
“ずっと”って願ったのがいけなかった?
それならそうと最初に言ってよ…


気付けばもうアパートの前
やっぱり此処は潤くんの居る世界じゃないんだ

もう二度と…会えないんだ

ストーリーメニュー

TOPTOPへ