テキストサイズ

びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼


「あの人、しつこいからさ
もしそうなら和也のことが心配だなって…」

「琥珀様…」

「琥珀はなぜそのお話を知っているのです?」

「階段の踊り場までお客をお見送りした時にね
下から大きな声で『奏月を身請けしたい』って聞こえて。
僕のお客にも丸聞こえだったし
下でお待ちだったお客人にも聞こえてたはずだよ」

「えっ?!」

「もしかして、そのお客人も奏月の…?」


「櫻井様です、」


そうか
翔様の御様子が少しおかしかったのはそのせいなんだ…
知られてしまっていたんだ…


「どうするの、和也」

「どうする、って…」


真に喜多川様がそのおつもりなら
僕に拒否権は無い


「あの人のとこに行くの…?」

「…」

「僕、ずっと思ってたんだけどさ
和也には想うお方が居るんじゃない…?」

「…それは……」


「僕達は和也の味方だよ? 何でも話してよ」

「奏月」


藍姫様が僕の手にそっと手を添えて頷いた


「想い合っているのでしょう…?」


その言葉に思わず目を見張った
藍姫様は知っていたんだ…僕と翔様のことを…
そうか
松本様からお聞きに…
そうだったんだ


「…はい……」

「えっ?! ちょっと! さとちゃん、知ってるの?!
相手は誰?! ねぇ、だぁれー?!」


僕の想うお方は櫻井様です、と琥珀様に伝えると
藍姫様は目を潤ませて優しいお顔をされた
二人が心で結ばれていること、真に嬉しく思いますと…


「じゃあ尚更、この身請け話を進めさせる訳にはいかないね…
喜多川のオヤジの弱点を突いて…そうだな、楼に出入り出来ないようになっちゃえば…」

「そんなことが出来るのですか、琥珀」

「やってみなきゃわからないよ。
取り敢えず、僕とさとちゃんは喜多川のオヤジの情報収集をしよう?
何かアラでも見つかればね…
和也はどう思う?」


楼としては
大金を落としてくれる喜多川様は大事な客であろう
でもこのままでは…


「…藍姫様、琥珀様。お願い出来ますか…?」

「わかった。
でもこの計画を進めるためにはもう一人、外部と通ずる事の出来る人が必要…
ねぇ、和也
この際、櫻井様にも手を貸してもらおうよ」

「私も、それが良いと思います
櫻井様に真実を伝えなさい
今の櫻井様ならきっと…奏月の為に動いてくださるはず」


藍姫様と琥珀様が
強い瞳で僕を見つめた

ストーリーメニュー

TOPTOPへ