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アップルパイと君の隣で

第9章 手料理とやきもち


佳奈は温め直したシチューを持っていつものように私の前の席につくと両手を前で合わせスプーンでゆっくりと口に運び無言でシチューを食べ進める。
何だか不穏な空気が流れる中私達は終始無言で朝食を食べた。

「先輩...ここまで料理出来なかったんですね」

佳奈は最後の一口を味わうように食べ終わると言葉を発した。

「悪かったわねっ!だから食べなくていいって言ったじゃない」

「だって先輩指怪我してるじゃないですか。料理苦手なくせにあの男の為に作ったなんて言うし...」

気まずそうに視線をそらすと小さな声で訴えた。

「えっ?」

「先輩はあの男の為ならこんなに美味しいシチューだって作っちゃうんですね」

「何言って...って美味しい!?」

「はい。味は壊滅的ですけど、食べれなくはなかったですし、これ作ってる先輩想像したらかなり美味しいです」

味が壊滅的なのに美味しいって...
頭のおかしさが遂に味覚にまできてしまったのか。

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