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アップルパイと君の隣で

第10章 隣に居たいなんて


「嫌、ですか?」

佳奈は進めていた足を止めくるりと私の前に廻ると上目遣いで尋ねた。

「...いや、良いんじゃないかな。映画」

私はそんな佳奈の提案に乗る事にした。
さすがに人前では少しは気を使っているようだし大丈夫だろうと思ったからだ。
他に案がある訳でもないし、私だって佳奈に負けっぱなしではいられない。
そんなくだらない対抗心が湧いた為でもある。

「珍しく乗り気ですねぇ。何か観たい映画でもあるんですか?」

そんな私の浅い思考などお構い無しに佳奈は問いかけた。

「んー。特に無いけど...」

「そうですか。じゃあ、一旦見に行ってから決めましょうか」

そう言うと佳奈は「その前にご飯ですね〜」なんて言いながら再び歩き出す。

デートに誘ってきたのは佳奈の方だというのにどこまで行ってもマイペースだ。
私も行き当たりばったりという事も少なくないしこう言うのは嫌いではないが。
しかし、今日デートに誘ったのも今朝の思いつきだったように思える。

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