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異彩ノ雫

第93章  五ノ月




もしも
私が猫ならば
空を泳ぐ 色とりどりのさかなたちを
胸を踊らせ見上げるのだろう

なぜ あんなところに…と思いながら
あたりを見回し
そっと爪先立って 手を伸ばす

風に翻り逃げる長い尾…

幾度か繰り返しては
ふいに 夢から醒めたように歩き出す
まるで何事もなかったように…



…何事もなかったように
ざわめきと紫煙が
カウンターをすべってゆく

マスター…
子どもじみた夢を見がちなオトナに
スコッチをストレートで







【夢想】


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