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異彩ノ雫

第15章  八ノ月 ②




主さまへ…



そんな書き出しの文を したためたものか

この櫛を贈られた人は…



螺鈿をほどこした黒漆の地に

高蒔絵で描いた 紅の牡丹一輪



浮き立つ想いに 次の逢瀬を指折り数え

けれど

切ない心のうちで

……主さまのまことを 戴きたく候う

と綴っていたろうか…



時の眠る古物の部屋では

夢語りの囁きが聞こえてくる







【櫛】


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