
飴と鞭と甘いワナ
第9章 1匙め
開講初日
持ち物はエプロン、三角巾のみ
エプロンなんて持ってないから、彼女に買ってきて貰った
三角巾は100均のバンダナ
チラシの地図を辿って着いた先は、専門学校の一室
ー…へぇ、怪しいチラシの割にはちゃんとしたとこなんだ
そんなどうでもいい感想を持ちながら、教室に入ると
……なんか、年齢層高くない?
見れば殆どが50代かそれ以上
俺と変わらない奴は2~3人?
空いてる調理台前の椅子に腰掛けて、何となく人間観察をしてた時
「ここ、空いてる?」
俺とさほど変わらない年齢の人から声を掛けられた
「あ、はい」
“ありがと“ と隣に座ったその人は、同じ男から見てもなかなかの男前
「良かったー、若い人いて。…見たらおっさんばっかでちょっと焦ったんだよね」
そう言いながら、ニコニコと笑って俺を見る
その笑顔があまりに屈託ないからか、喋り方が、優しいせいか
人見知りの筈な俺も素直に笑い返していた
ー…これが、相葉さんとの始まりだった
