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修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

 神仏の存在に、裏はあってはならない。


 表だけでいい。人間の世界が広くてもいい。敵視する必要はない。


 共存すればいい。互いに足りないものを分けあえばいい。


 教えあえばいい。


 それが進歩に繋がる。


 人間に治せない病気があれば、妖精である自分なら治せるかもしれない。


 妖精の世界にしかない作物、教養、夢の世界だけではない。


 たくさんの妖精がいるなかで、このような考えを持っているのは自分だけだったのか……他にいなかったのか?


 遠い遠い、何億年前の先祖がおかした破壊、野望、表の世界まで黒く塗りつぶそうとしたことなんて、今は関係ない。


 自分は生まれてないんだから……。


 いま、それが目を覚まし、元の姿に戻ろうとしている。


「私は……初めて生きていく道で、自分を汚します」


 ペタロは両手を広げて天を仰ぎ、球也達に背中をむけた。


 球也は止めるように呼び掛ける。


「まさか……やめろーっ!! いくらなんでも、空は飛べない!!」


「おい!! 球也くん、こんな時に冗談を言ってる場合ではないだろう!!」


 球也の言動に、淀屋橋が叱りつける。


「だって、あれ……」


 球也がアゴで示す。


 ペタロは上を向いて、バタバタと手を前後に振っていた。


「……あれは、なにをやっておるのじゃ?」


 淀屋橋は怪訝な表情を浮かべる。


 ペタロは飛ぼうとしているわけではない。割れた所に飛び込むつもりだったが、タイミングを逃し、地震の揺れで崩れたバランスを立て直そうと、手が勝手に動いていたのだ。



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