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修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

「うわぁ、このタイミングで、ヒューヒュー言いたいけど、言われへん!!」


 まだ、この状況で気持ち的には少し余裕はあったが、球也はただ耐えるしかなかった。


 奈美は地面に顔を当てて、祖父である淀屋橋の体をしっかりと掴んでいた。


『あああああああぁぁーーっ!!』


 突然、遠くの方から叫び声が響いた。


 その声は普通の叫び声には聞こえなかった。まるで、断末魔を迎える恐怖の雄叫びのように聞こえた。


「あ、あれはなんじゃ?」


 淀屋橋はその声に、微かな恐怖を感じた。


 ペタロは体をブルッと、震わせた。


「あれは……どこかの町か村が、闇の者に変わった。元の姿に戻った喜びの声」


 そう言うと、ペタロは一歩前に出ようとした。


「ダメッ! あなた一人行っても、どうしようもないよ」


 純化はしっかり、ペタロの体を捉えていた。


「純化さん……私はあなたを愛してる。だから、生きてください。私は行かなきゃいけない。私も、闇の者の一部……気持ちにさからいたくないけど、さからわなければいけないのだっ!!」


 ペタロは純化を引きずったまま前に出る。


 それは、ペタロの意思ではなかった。闇の力によって、地の底に引きずられているのだ。


 闇の者は、地の奥底で大きく口を開き、一人でも多く吸収し、力にしようとしている。


「純化さん!! このままだと、あなたまで落ちてしまいます!! 早く、離れてください!!」


 ペタロは純化の腕をほどこうとする。しかし、純化は離れなかった。


「あなたは私達の仲間、行くなら、きゅう坊達と一緒に行く。もし、あなたが、闇に負けて落ちるなら、私は一緒に行って、あなたを救ってみせる」


 純化は必死に耐える。



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