キラキラ
第34章 バースト9
俺は、本日何度目かわからない、深い深いため息をついた。
でも、ここで、いつまでもこうしてるわけにいかない。
腕時計を見ると、時刻はもうすぐ22時になろうとしていた。
翔だって、明日は大学のはずだし。
かずも学校だ。
本来ならば、人様の家をたずねる時刻ではないのだ。
どうか……冷静に話ができますように……
震える指先で、インターフォンを押そうとしたその時。
「あれ?」
後ろから、よく知る声がした。
振り返れば、ジャケットにジーンズというカジュアルな格好をした、優しい人が目を丸くして立っていた。
「……智さん……」
「いらっしゃい。そんな外からわざわざ入らなくても、潤なら、いきなり室内に跳べるのに」
律儀だねぇ……と、智さんは、穏やかに微笑みながら歩み寄ってくる。
俺は、その笑顔を見て、なぜだか泣きたくなって、咄嗟にうつむいた。
智さんは、俺の背中をポンポンと叩き、
「……どうした?まぁ、入れよ」
そのまま片手で、玄関の扉を開いた。
ふわりと薫る大野家の匂いに、胸がぎゅっとなる。
何を察したか、智さんは、ぐいっと俺を玄関に押し出し、
「ただいまー。翔ー?潤来たぞー」
大きな声をかけた。
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