キラキラ
第7章 ナチュラル
O
さっきから難しい顔をしている翔ちゃん。
手にしてるのは、………雑誌、じゃないな。
台本?
翔ちゃんが、机に何やら広げて、さっきから黙りこくってる。
真剣に読みこんでるみたいだから、邪魔しちゃ悪いなって思って、こっちも口をつぐんでいるのだけど。
あまりに難しい顔をするから気になって仕方がない。
ここは、五人が揃うレギュラー番組の楽屋。
が、今は、翔ちゃんと俺の二人だけだ。
松潤は、取材。にのも取材だっけ?
相葉ちゃんは、他番組の打合せが終わってから来るらしい。
みんな忙しいよね………あ、翔ちゃんが眉間にしわよせて、両手で顔をおおった。
まじで困った時のアクションだ、あれ。
………何みてんだろ?
どうにも気になってきて、そっと立ち上がる。
音もなく、翔ちゃんのうしろに近づき、机に広げられた、台本らしきものを覗きこんだ。
「なにこれ?」
「え。びっくりしたー………」
翔ちゃんが、振り返り、ドングリ目を見開いて俺を見つめた。
「台本?なんの?」
俺の問いに、翔ちゃんがぼそぼそと答える。
「単発のドラマなんだけどさー………読めば読むほどちょっとヘビーな場面があってさ………」
「ふうん………?」
ちょっと見して、と手にとり、パラパラとめくる。
サスペンス仕立てのラブストーリーってとこかな?
翔ちゃん主演だ。
ラブストーリーなんて、珍しいじゃん。
ざっと目をとおしていくうちに、納得した。
やたらと、ラブシーンが多いんだ。
「なんかさ、原作マンガはもっとすげえらしくって。これでもソフトになったんだって」
翔ちゃんが困ったようにため息をついた。
聞けば、昔からこの脚本家から熱烈なラブコールをうけ続けてたらしくて、ずっと先伸ばしにしてきたけど、いよいよ受けないわけにいかなくなったらしい。
「受けた以上は、やらないとダメだけどさ………自信ねぇよ………」
「なにいってんの」
情けなくいう翔ちゃんにくすっと笑う。
「恥ずかしいの?」
「それもあるけど………まあ、芝居だから割りきるしかないのは、分かってる」
「じゃ、なに?」
すると、翔ちゃんは、ぼそぼそと言いながらうわめづかいにこちらを見た。
「………智くんはさ。キスを松兄にしかけたことある?」
………………は?