キラキラ
第2章 ねがい星
N
きれいな満月だった。
昼間の暑さが嘘のように、時折、サーっと涼しい風がふきぬけていく。
チロチロと、どこらからか聞こえてくる虫の声との相乗効果で、すっかり秋気分。
俺は、窓辺に椅子をひっぱってきて、跨ぐように座り、せもたれに、両手をのせて、月を見上げた。
吸い込まれそうなほど、大きくて、妖しいほどに白く光ってて。
ぼーっと、見つめていると、なんだか意識までとんでいきそうになり、フルフル頭を振る。
「どした……?」
風呂から上がってきた相葉さんが、ポカポカする手で、俺の髪の毛をさわる。
「……今日の月明かり、半端ないな、と思って」
「あー、ほんとだ。きれいだねー」
言いながら、プシっと音をたてて、相葉さんが、缶ビールのプルタブをあけた。
そのまま、ごくごく飲む音を聞いて、俺は少し口を尖らす。
「俺のは?」
「これ、ラスト1本」
「ひでぇ……」
相葉さんは、ふふと笑って、ハイと飲みかけの缶を、俺の頬にペタリとつけた。
「……つめたっ」
「半分こね」
「…………」
にやっと笑ってうけとり、一気に流し込んだ。
苦味が、美味しいと、感じるようになったのは、いつのころからだったろうか。
相葉さんが、俺の後ろからそっと腕をまわしてきた。
「なんか、風邪ひきそうなくらい冷たい風だねー」
「それ洒落?」
「え?」
何を言われたか分からない顔をしてる相葉さんが面白くて、俺はアハハと笑った。
相葉さんの腕の中は、心地いい。
風呂あがりだからか、相葉さんからは、シャンプーのいい香りがして、腕にコテンと頭を預けてみた。
相葉さんが、低く囁く。
「……する?」
「……しない。今日は疲れた」
とたん、ざんねーん、というように陽気な声にかわる。
「そっか。じゃあ寝よ。明日も早いし!」
(は? もうこの人……)
「……あのさ、突然、泊まりにきといて、引き下がるの早くない?」
「…………なに。したいの?」