
キラキラ
第18章 アッチノキミ
Sho
どういうわけか。
今朝から、潤の機嫌が少しだけ悪い。
少しだけ、というのは、例えば俺をガン無視したりはしないけど、なんとはなしに俺をスルーしたがる素振りをみせる程度に、悪いということだ。
つまり。
早い話が避けられてる。
……………なんでだ?
俺は、頬杖をついていた小指で、自分の唇をカリカリこすって考えた。
基本、俺にべたぼれな潤は、よっぽどのことがない限り、俺に怒ることもなければ、あたることもない。
むしろ、短気な俺が、勢いでそういうことをしてしまい、潤を泣かせてしまうパターンがお決まりで、あとでよく智くんに叱られる。
だから。
逆のパターンは初めてなのだ。
いつもいつもにこにこして俺のそばから離れない潤が、俺のそばから離れようとしてる。
避けようとしてる。
……………寂しい。
ふと気づく感情に、我ながらひいた。
俺は、こんな弱気になるようなタマじゃねえぞ。
そうだよ。
ダメだろ、潤。
俺にこんな思いさせるなんて、恋人失格だそ。
なんでなのか、吐かせなきゃ。
ゲーム画面からチラチラと潤を盗み見てると、潤はスマホを触り、相葉くんに何やら話しかけてコロコロ笑ってる。
少し苛立つ。
……そんっな可愛い笑顔、俺にもちっとは向けてくれてもいいんじゃね??
潤をつかまえようと立ち上がりかけたら、絶妙なタイミングで、ちょっと出かけてくるね、と、当の本人は楽屋を出ていってしまった。
「…………」
……………絶対俺の動き見てたよな?
くっそ……………なんなんだ。
俺は、黙ってもう一度そのまま座りゲーム画面に視線をおとした。
ついさっき、命をつかいきったヒーローは、ゲームオーバーの文字と共に画面の中で倒れている。
……………なんだか、自分みたいで笑えた。
