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キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


くるっと周りに視線をめぐらしても、近くにあのキラキラオーラの男は、いなかった。


「あれ…さっきまでいたのに」

「トイレじゃない?」


相葉くんと顔を見合わす。

有名国立大の学祭とあって、そこそこの人混みである。
少しよそ見をしたり、立ち止まったりしたら、確かにはぐれてしまうかもしれない。


「だーっ!もうなにやってんだ、あいつは」


翔さんが、ポケットからスマホを取り出して、潤くんに連絡をとり始めた。
俺らは、邪魔にならないよう道のはしに移動する。


「……潤?おまえ、どこいんだよ……え?…迷子?…うん………うん。分かった。片付いたらまた電話して」


翔さんは、電話を切ると、不思議そうな顔をしている俺らに向かって、肩をすくめた。


「…迷子の子供を拾ってしまって、学祭の本部まで送り届けにいってるってよ」

「え…そんな子いた?」

「いや…気がつかなかった」

「潤くん優しいねー」

話していたら、苦笑した翔さんは、また目の前でスマホを操作しはじめて、どこかへかけ始めた。


「……もしもし。風磨?俺」

「……!」


中島さんの顔がこわばった。


「今さ、お前の学校の学祭きてんだけど…お前どこいんの……え?……うん…うん」


中島さんは、だまって唇をかんでる。

自分の好きな相手が、目の前の人物の電話のさきにいるんだもの。
そりゃ、緊張するよね。

彼の苦しいまでの思いが伝わってきた。
好きで好きで。だから辛い、と。

濁流のような思い。

それに引きずられまい、と、ふう、と深い深呼吸をした、その僅かな隙をねらい、彼の緊張した強い思いが、あろうことか俺の中に一気になだれ込んできた。


……やば。


俺は強く目を瞑った。

だめだ。心は読みたくない。


チカラをシャットダウンしたい。

俺は何かにすがりたくなり、咄嗟に隣にいた相葉くんの手をにぎった。


「?!」


相葉くんが、びくりとして手をひこうとしたけれど、俺の様子を見て、表情をかえた。

甘い雰囲気で繋いだ手なんかじゃなくって。
助けてほしくて繋いだ手。
相葉くんも気がついてくれたみたい。

「……」

中途半端に感度のいい俺のテレパスの能力は、強い気持ちに時々引きずられるんだ。
ガードが甘いと、こうなる。

相葉くんといるから浮かれてたのかな。

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