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「な、何を言っているの……」

突然の言葉に、夫人は気が動転した。

ジュールがあの事を知っている筈がない。もし知っているとしたら、それは一体いつ、誰から聞いたのだろう……？

「とぼけたって無駄ですよ、母上もご存知のはずだ。いや、もう貴女なんか母上ではない。そうだ、これからはあの人のことを母上と呼ぼうかな……」

「あの……人……？　まさか」

母親ではない……繰り返されるその言葉に心が引き裂かれる。

しかしそれ以上に今、信じ難い疑惑が夫人の心に湧き上がり、胸が騒ぐ。

「塔で飼っていた女です。いや、新しい母上にこんな言い方はないな。それに名前もちゃんとある」

ジュールがあの女を知っている……いや、知っているだけではない。塔で飼っていたなんて……絶対にあってはならないことなのに。

あの女とだけは。それなのに……

夫人は今、自分の息子の発する言葉が異世界のもののように感じていた。

異世界でなければ夢……悪夢だ。