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影に抱かれて

第15章 その、白い手

「ずっと一緒だよ……リュヌ……僕は結婚したりしない……」

「……」

その言葉に応えるように、ジュールの背中を優しく撫でさする。しばらくそうしていると、スースーと静かな寝息が聞こえてきた。

どうやらジュールが眠りについたらしい。リュヌはゆっくりとベッドを離れ、ジュールの部屋を出た。

大広間に戻ったほうがいいだろうかと考えながら、リュヌは廊下を歩く。

今日はいろいろなことが起きた……
泥まみれになった夫人の遺体。
そして涙と泥で汚れたジュール。

本当に、フランクール家はこれからどうなってしまうのだろう……

そんなことを考えながら胸のロザリオに手を伸ばしたその時、リュヌはジャンに呼び止められていた。

「リュヌ、ジュール様は眠られたか?」

「はい、よく眠っておられます」

「……着いて来なさい」

厳しい顔をしたジャンのあとを着いて行くと……そこはジャンの私室で、リュヌはジャンと向かい合うようにソファーに腰かけ、その言葉を待った。

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