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影に抱かれて

第2章 月と太陽

「母上にだって、リュヌには文句言わせたりしないから大丈夫だよ。そうだ、祭壇には夜になったら行こう。ね?」

「うんっ。でも……今は部屋に戻ろうよ。お願い、ジュール。奥様が心配しているよ」

潤んだような青い瞳でそうお願いするリュヌを、ジュールは眩しそうに眼を細めて暫く見つめていた。

「……仕方ないなあ」

一人息子らしく我儘なところもあるジュールだったが、リュヌの頼みなら殆ど何でも無条件に聞いてくれる。

少なくとも……最近まではそうだった。

「だったらその代わりに……また、してくれる?」

「え……?」

ジュールはその薄い唇を自らの舌先で僅かに濡らしながら微かに微笑む。

「ほら、おまじないだよ……リュヌ」

おまじない。

それは数年前からジュールが施してくれていたもので、最近になってからは様々な理由を付けて、リュヌ自らがするようにねだられる行為だった。

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