影に抱かれて
第9章 待ち受けるもの
「おおよその事情は今朝、奥様からうかがっておる。……奥様へのご挨拶は明日の朝にして今夜はもう休むのじゃ」
「はい。でも、あの、ジャン……」
「……疲れているじゃろう。客間を用意しておるから。ほら、早く……」
リュヌの質問を遮るようにジャンが言う。
リュヌが、何を置いてもまずジュールに会いたい筈だということにジャンが気付かない訳がない。しかしジャンは敢えてその名前を避けているかの様で、先を急がせるその態度は明らかに不自然だった。
「あの……僕、ジュールのことが心配で……ジュールは部屋にいますか?」
ジュールとの関係のせいで屋敷を出された自分が、こんなことを望んでいいのか分からない。でも、夫人が呼び戻してくれたのだし……この気持ちを、ジャンなら分かってくれるのではないかとも思う。
しかし、ジャンは厳しい表情を浮かべたままだった。
「旦那様が亡くなったことは知っておるな? この屋敷の全てが……変わってしまったのだ。出て行った使用人も多いし、奥様も心労から臥せっておられる状態じゃ」
使用人が離れた……と聞いて、リュヌは納得したことがひとつあった。門の内部に入ってから思っていたことだが、庭全体が非常に荒れているのだ。とても普通の状態ではない。
「はい。でも、あの、ジャン……」
「……疲れているじゃろう。客間を用意しておるから。ほら、早く……」
リュヌの質問を遮るようにジャンが言う。
リュヌが、何を置いてもまずジュールに会いたい筈だということにジャンが気付かない訳がない。しかしジャンは敢えてその名前を避けているかの様で、先を急がせるその態度は明らかに不自然だった。
「あの……僕、ジュールのことが心配で……ジュールは部屋にいますか?」
ジュールとの関係のせいで屋敷を出された自分が、こんなことを望んでいいのか分からない。でも、夫人が呼び戻してくれたのだし……この気持ちを、ジャンなら分かってくれるのではないかとも思う。
しかし、ジャンは厳しい表情を浮かべたままだった。
「旦那様が亡くなったことは知っておるな? この屋敷の全てが……変わってしまったのだ。出て行った使用人も多いし、奥様も心労から臥せっておられる状態じゃ」
使用人が離れた……と聞いて、リュヌは納得したことがひとつあった。門の内部に入ってから思っていたことだが、庭全体が非常に荒れているのだ。とても普通の状態ではない。