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第6章 記念日には A×N
身の丈にあっていないと分かっていても、
人間、時にその羞恥を忘れ捨て去る覚悟で
やらねばならない事もある。
踏ん切りがどうしてもつかないこともある。
それでもだ。
そして、今。
その男の目の前には、ジュエリーショップ。
つまりその男もまた、その局面に
立たされた一人なのである。
スラリと伸びた脚。
お洒落な着こなし。
明るめの茶色の髪は、風が吹くたびに
サラサラと揺れている。
黙っていても、どこか人の良さが
滲み出ているような。
その男の名前を相葉と言った。