ビタミン剤
第25章 a mole tunnel
待たせてあったタクシーに乗り込んで
行き先を告げてから
深いため息と共に目蓋を閉じた。
運転手に気付かれないように
そっとズボンのポケットから股間に触れる。
愛しい人の張り巡らせてる糸の罠へ
からまって捕らえられる為に向かう。
あの人が欲しがってるのは醜いモグラの
俺なんかじゃない
人々を魅了する綺麗な羽根をひろげて
自由にうつくしく舞う生き物
けれどなにかを食べとかないと
本当に欲しいものを手に入れる為の
エネルギーまで枯渇してしまうから
翔くんの臓物を満たす足しにしてほしい
俺はよろこんでこの肉体を貴方に差し出すよ。
きついタバコの匂いで隠蔽してくれた
翔くんの匂いをまたこの身体に擦りつけて。
蠱惑的な香りとフレグランスなあまい香りに
酔い痴れながら
無茶で変態的行為を強いられて
夜明けまで散々に喘いで鳴かされたい。
どうか翔くんにすべてを支配されますように。
モグラが掘る穴は地中の奥の底
どこまでも暗くて深い罪業の穴。
おわり
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