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ビタミン剤

第30章 ムテキのヒーロー


Sside


「翔、好きだよ。誰より翔が好きだ。
ずっと傍にいるから、そんな顔するなよ。
翔、おいらだけの翔ちゃん」






所有格?

誰の俺なの?

ずっと傍にいるから
それは約束?それとも契約?


力強い声で名前を呼ばれる
優しい声の響きはずっと耳許で囁いてて欲しいって思うおだやかな声色。


涙がひと粒溢れ落ちた。




しっかり者の頼りになる賢いお兄ちゃん


幼い頃からずっとそう言われてきた
それが俺のあるべき姿
そう信じてきた

誰かを頼ったり、誰かに甘えたり

素直に自分の想いをさらけだすことは
自分の弱さを知られる事だと思えて
そんなことしたくなかった

強がる事、
自分をどうにか鼓舞して高みを目指し続けて
より高い目標を目指して
足掻いて踠いて震える両脚をたたいたりして
此処までやってきた。


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