
ビタミン剤
第39章 ノクチルカ
じっと見つめて動かない俺を見てなにかを察して
くれた潤が手をつないでくれる。
目と目だけで分かり合えてるなんて過剰な自信は
持っていないけど
なにかを伝え合う気持ちくらいは通じ合ってるかな。
「ふう……間に合ってよかった」
「なにが?」
小さくささやいた潤の言葉に問いかけてみても
微笑みながらなんでもないよって言われて
きつく抱きしめてくる。
風磨、潤の言うとおり
おまえに入り込む隙間はどこにでも有りはしない
髪の毛一本でさえ
俺のものであって俺だけのものじゃない
俺の肉体も心も
おまえにあげれるものは何ひとつない。
そういい子だから
肩を落としてしょぼくれてないで
顔をあげて
おまえを見つめる眸は案外近くにいるかもしれない
俺に執着するのはもう終わりにして
ほら、眸を凝らして見てみてごらん
きっとおまえの行く先には……
ロビーの遠く離れた場所のソファに背中を丸めて 座り込んでる風磨がいた。
そばにはメンバーの1人のあいつが寄りそっている。
俺たちに気がついてお辞儀をしてきたが声はかけずに会釈だけしてそのまま車に向かった。
いつか風磨も
気がつくときがくるのかもしれない
追いかけてる青い鳥が
以外に自分のすぐそばにいることに。
