きみがすき
第18章 *ジュウナナ*
「うわっ!風強いね。」
思わずコートの襟を手繰り寄せる。
ニ「ですね。明日の天気、予報では荒れるみたいですよ。」
そうなんだ。…残念。
「じゃぁ、朝は早く出たほうが良さそうだなぁ。」
ニ「電車。流石に止まったりはしなそうですけど、遅れは出そうですね。」
冬の寒さもあり、自然と足早になる駅までの道のり。
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「じゃぁ俺こっちだから。」
駅の改札口でニノに声をかける。
ニ「あ、大野さん。」
ん?と呼び止められて足を止める。
ニ「今日はありがとうございました。」
固いなぁ(笑)
「俺なんもしてないじゃん。
でも、どーしてもお礼したいなら、一緒に釣りに…」
ニ「私、太陽苦手なんで。」
…被せてきたな。
いーですよ。1人で行きますよ。
ニ「代わりと言っては何ですが、面白い釣り動画があるんで送りますね。」
なにそれ。
「いらねーよ(笑)」
ニ「あは、お疲れ様でした。」
大「うん。お疲れ。」
やっぱり直ぐには上下関係の癖は抜けないよね。
仕方ないと思いつつも、寂しいなと目的のホームへ足を向ける。
ニ「智さん!」
え?
ニ「また明日ね!」
俺が振り向いた時には、足早にホームへ向かうニノの背中。
おぉ…なんだ、ちょっときゅんときたじゃん。
思わず1人でにやけてしまった。
「うん。また明日。」
もう聞こえないけど。
…さて、俺も帰りますか。
ちょっと緩んだ顔を引き締めて、改めて慣れ親しんだホームへと足を向ける。
と、ポケットの中の携帯がブブッと、メールの受信を知らせる。
ニノのやつ、マジで動画送ってきたの?てか早いな。
若干呆れつつも画面の受信サインをタップする。
あ…
そこには、ニノの名前は無くて、
ずっと待ち望んでいた名前が映し出されていた。