きみがすき
第38章 *だいすき*
光の速さでなんて能力はなかったけど、いつもよりも何倍も急いで、でも丁寧に明日分の仕込みを終わらして、レジ閉めて、キッチン掃除して
合間にチラっと大ちゃんを見れば、それはそれは丁寧にテーブル拭いてくれたり、隅々まで掃除をしてくれてて…
俺と潤の店を大切にしてくれているかのようで…嬉しかった。
と、
テーブルを拭いてた大ちゃんが、いつつ。と腰を伸ばしてて、やっぱり疲れてるよね。って心配と罪悪感を抱えつつ
でも帰したくない、帰すもんかって気持ちが全然勝ってる…
俺ってこんなにも我儘な奴で…
こんなにも人を思いやれない奴だったんだ…って…
もう…さ…
連絡がとれなくなった時点で…ううん、最後にデートした日から
大ちゃんの中では終わったのかもしれない
けど、もう1度…もう1度だけ……
俺は、ここぞという時にしか飲まない紅茶を入れ、よし!と拳を握り人知れず気合いを入れていた。
『すきです。』
大ちゃんからの、とてもすっきりした簡潔な言葉。
なのに俺は、全然理解ができなくて
だって…
何…言ってんの?
すきだったら、すきだったならさ…なんで連絡くれなかったの?
なんで……そんな緩みきった顔で俺を見るの?
何を…考えてんの?
なんで………
膨らんでいく
モヤモヤ
頭の中を巡る
グルグル
俺の思考は
グチャグチャ
理解できない
イライラ
頭の中も、気持ちも着いていけない。
でも…
何度かゆっくりと深呼吸をして、冷静になろうと努めて
やっと
俺が辿り着いたのは
そんなシンプルな言葉なんかじゃわからない。
もっと大ちゃんの言葉が…大野智の気持ちが知りたい。
そう思った。