きみがすき
第38章 *だいすき*
いや、正確にいうと…
ガタンっ…!
「っわ!」
大「っ!」
ぐい。と
引き寄せた体は、なんの抵抗もなく俺の胸の中へと落ちてきて
その勢いと思った以上に軽かった体に、意表を突かれた俺はバランスを崩し、大ちゃんの体を抱き止めたまま、後ろへと倒れた。
「ぃつつ…」
…
危なかった…
尻と背中はぶつけたものの
抱き締めた大ちゃんは床にぶつからないように死守し、自分の頭も床にぶつかる瞬間持ち上げた。
「っ大ちゃん大丈夫?!」
大「…」
俺の胸にぴったりと顔を付けたままの大ちゃん。
見えるのは柔らかそうに揺れる髪。だけ
きっと急にこんなことになったから、絶対驚いたと思う。
…何も返事はなくて、不安になったけど
大ちゃんを抱き締めた俺の腕は、一向に振り払らわれることはなくて
その体は俺に身を預けてくれている様に感じた。
でも
さっき…掴んだ腕は震えていたし
強く抱き締めた体は、冷たく冷えている。
俺は、その体を包み込む様に 暖めるように
もう1度、抱き締め直した。
説明して、わかってもらって
そして許して貰えるならと
そう考えていた。
けれど違くて
そんなの大間違いで
説明するとかしないとか
わかって貰うとか貰わないとか
許して貰うとか貰わないとか
まず
それよりも
もっともっと大切で重要なこと
大ちゃんは
あの日から
ずっとずっと
待っててくれたんだ。
『ごめんね。』
でもなく
『ありがとう。』
でもない
「大ちゃん。」
大「……」
「すきだよ。」
大「っ…」
この言葉を
「だいすきだよ。」
この言葉だけを
大「………ふっ…っ…」
「俺、大ちゃんが だいすきだよ。」
ずっと待っててくれたんだ。