兄達に抱かれる夜
第9章 こんなこと、もうやめて。
翔太side
『翔太くんっ、遊びましょうっ』
無邪気に笑いながら、俺の後をいつも追いかけていた恵麻。
年が近く、一緒に過ごす時間も、兄弟の中で俺が一番長い。
『兄様の中の誰かと、お嫁さんになるんだってっ、恵麻は翔太君のお嫁さんがいいなっ』
無邪気な約束をした。
その言葉を支えにしていた。
仕来たりの話は、昔から勤めている使用人から、聞いていた。
そんな事になる前に、恵麻をここから連れだそう。
会社もあるし、海外にだって、アテがある。
……あの夜に、恵麻と一緒に、ここから逃げだそうとした。
財産を差し押さえられても、俺の会社がある。
協力者でいてくれる、使用人もいる。
恵麻と一緒なら、どこにだって行かれる。
俺はすぐに行動を起こそうとして、裏庭を通りかかった。
そこで、見てしまった。
雨の中で、抱き合う二人。
康兄の真剣な言葉、戸惑う様子の恵麻。
………その場から動けなかった。
あの時に奪ってしまえば良かったのか?
だけど俺は………。
『翔太くんのお嫁さんがいいなっ』
あれは、子供の頃の話だ。
恵麻が康兄を好きなら…………。
俺は馬鹿だ。
そんな可能性、考えもしなかったなんて………。
笑える話だ。
康兄と一緒にいる恵麻は、いつも笑っていて、幸せそうな表情をしていたじゃないか。
恵麻を抱き抱える、康兄。
…………仕来たりがはじまってしまう。
動けない、俺。
せめて、俺の子供を………。
情けないけど、それしかないと思ったんだ。
そこまでしてまで、好きなのに。
俺の事がキライでも、俺の子供が出来てしまえば。
一緒にいられる。
ただ、一緒にいたい為に、そのすべを探している。
こんなにも、好きなのに……。
康兄や和兄と過ごす恵麻に、堪らなく嫉妬して、上書きするように、体を重ねる。
こんなの、ただの動物だ。
優しくしたかった。