兄達に抱かれる夜
第1章 お願いっ、嫌なのっ、あたしは……っ
自室に戻り、机の中にある石田のお母様の手紙を取り出す。
その隣にある、小さな箱。
小さな錠剤は日にちを数えるように、並んでいる。
この小さな錠剤はピルだ。
石田のお母様が毎月きっちりと送られて来ていた、あるモノ。
ずっと飲み続けている。
鞄の中に手紙とピルを入れて、最低限の荷物を詰めて行く。
何も考えてない。
あてなんかない。
お金も少ししかない。
荷物をまとめて、着替えて、雨が降る裏庭に回った。
靴を履いて、秘密の抜け穴に向かう。
「…………どこに行くんだい、恵麻?」
背後から、静かにかけられた声に体が震えた。
康兄様だ………。
雨に濡れるのも構わずに、あたしの傍に来て、手を掴まれてしまう。
「離してっ、お願い康兄様……っ」
力強く腕を掴まれて、引き寄せられてしまう。
「駄目だ、離したくはない」
ぎゅっと抱きしめられた。
「お願い、嫌なのっ、あたしはっ……」
康兄様の胸の中でもがくあたし。
必死で腕を突っ張って、康兄様の体から、逃れようと、もがくのに。
「ごめん、俺はお前が欲しいんだ、ずっと、この日が来るのを、待っていたんだ、だから……お前を逃がさないよ」
「そんなっ……!」
「ずっと、好きだったんだ、俺の子を……生んで欲しい……」
康兄様の胸の中で呆然としたまま、抱きしめられた。
そのまま、優しく唇が重なった。
「…………!」
唇が重なった瞬間、翔太兄様の唇の感触を、思い出してしまった。