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第5章 X'mas oxo
木兎さんが風呂から上がり、次に俺が入って上がると脱衣所にはスカートのサンタコスと黒いタイツとタオルしかなかった
俺は腰にタオルを巻き、スカートのサンタコスとタイツを鷲掴みにして脱衣所を出てソファーに座ってテレビを見る木兎さんの前に立った
「?赤葦??」
何で着てくれないのと言わんばかりに首をかしげて鷲掴みにされたスカートのサンタコスと腰に巻かれたタオルを交互に見る
「…俺は、女じゃありませんし女になれません」
「どうしたの赤葦?」
「俺ね、木兎さんと違って生粋のゲイなんです」
「うん。知ってる」
「好きになろうと思えば木兎さん以外の人でも好きになれます」
「…なにいってるの赤葦」
「それは。それは木兎さんも同じことなんです。互い以外に好きになる人の性別が男か女かってだけで」
「何でそれを今言うの」
「雰囲気を損ねてるのはわかってます
でも、俺、正直不安なんです
木兎さんは日本中が期待するエースです
それにこんなにも優しくていい男だから、貴方を眩しく感じてよってくる女はいくらでもいます
こんな、ぱっとしない、しかも男に時間を割いてくれてる、なんてこれからもずっとしてもらえるのか不安でいつ…」
「赤葦もういい」
途中から黙って聞いていた木兎さんの突然割り込んできた低い声に身が凍るような思いをする
「あ…木兎さん、ごめんなさい、俺、俺…」
さっきの夢がフラッシュバックしてきて心拍数が上がり、1歩、また1歩と木兎さんから次の言葉を怖がるように遠ざかる
「俺は、悲しいよ」
「あ…いやだ」
俺はあなたなしでは死んだ方がましだと心のなか叫ぶが声にならない
「そんな、自分を疑うような、俺を疑うようなこと、言わないでよ
俺はこんなにも赤葦が好きで、赤葦がいないと困るのに」
「え…?」
いつの間にかぎゅっと閉じていた目をゆっくりと開く
視界にはソファーにゆったりと座り俺をまっすぐに見つめる木兎さん
「それこそ、俺だって生きてけないよ」
木兎さんはそういって照れくさそうに微笑んだ
