
スケートリンクと溺愛コーチ
第6章 アイススケートフェスティバル当日!
今回(今シーズンのショートプログラム)の曲は、割と静かなもの。
あまり特徴がない故に、曲を理解し、表現するのが難しい。
ショートプログラムの曲だから、演技時間は3分程度。
ジャンプは3回4種類。
前半に1回、後半に2回。
はたから見れば、順調に演技できているかもしれない。
だけど。
全く、ほんとに、ぜんっぜん!
集中できない&ラファが言ってたストーリー通りに演技できない!!
だめだ・・・・
考えるな、考えるな、考えるな!
こうしているうちにも、時間はすぎていく。
気づいたときには、演技は終わっていた。
あー、もう駄目だ・・・
過去最低レベルの演技だった・・・
・・・呼吸が荒い。終わって安心したのか、どっと疲れがこみあげてくる。
大きな歓声をあげている観客にあいさつをした後、ラファのいるところまで向かった。
ラファは、私を抱きしめこう言った。
「お疲れ様。指摘したいところがいっぱいだね。」
うっ・・・
わかってはいたものの、いざ言われると心にグサッとくる・・・。
「だけど・・・なかなか良かったよ。新しい解釈の仕方だね。新鮮かつ斬新だ。杏莉らしいよ。」
「・・・褒めてるの?けなしてるの?」
「さぁね」
やっぱり、耳にかかる吐息がくすぐったい。
くすぐったいのを追い払うようにぶんぶんと首をふると、緊張した表情でリンクの中央にたつ柚ちゃんをじっと見つめた。
