テキストサイズ

Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

一番に私の元に来たのは


父母……


ではなく





父母が向けた弁護士さんだった。



優しそうな女性の弁護士さんが
しきりに私に聞いてきた。
「本当は何か訳があったのではないか?」
と。



それらに私は全て、一本化して
同じように答え続けた。


別人になりすますかのように





私がやった。
ムカついたから。
彼にフラれてムカついたから…。と。





テキトウに……ブレずに
言い続けた。




冷たい壁の部屋に入れられて番号をつけられた。



そこでただ、じっと時を待っていた。


あの人が一命をとりとめたのは
逃げた仲間二人が戻って救急に通報したから。



そして意識のない被害者に代わり
彼らの証言が有効となる。


あの人は被害者…

私は加害者……


それが固まっていく。



もう事情を聞かれることもなくなっていた。

そして
その二人が私の証言に合わせて事が固まった
……ということだろう。


もっとも、あの二人が事実を語る訳はない。
そこだけは私は心配していなかった。


だって
彼らにとって…事実を語ることに
メリットなんてひとつもない。


それは私にとっては好都合だった。





私の自供する、私のしたことは

悪質性がつよく
情状酌量などもちろん認められない。

審判が下ったら私は収監される。



とくに意志も持たず言われる事だけをやって
私はロボットみたいに過ごした。


覇気のない私を時々先生が
「声が小さい」と注意する。

私はそれら全てに、とりわけ抗わずに
ただ生きていた。


そんなある時

私に面会が来ていると言う。



先生に連れられて行った先に……。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ