君を好きにならない
第7章 攻められました
「それが
言いたかったのか?
ずっと」
「……はい…
早く
言わなきゃって思ってました。
でも言えなくて…」
早く
言わなきゃとか…
そんなに
アパートに
戻りたいのかよ
俺は
グラスのジンを飲み干し
ソファに身体を預け
天井に視線を合わせた
また
この部屋に
一人になっちまうのかと思うと
気が沈む
その時
オネェの言葉が
脳裏をかすめた
『アパートに帰らせないこと』
「友達と…
何かあったのか?
そんなこと
言いだして」
「…はい…」
「帰る理由が…できたのか?」
元彼と
より戻した
とか
「理由は…前からあったんだけど
迷ってて…」
前から
男と繋がってたのか
はぁ…
やりきれねー…
こいつを
どうやって
引き止めればいいんだよ
オネェ…
「それを話したら
すごく攻められました」
そりゃそうだ
俺でも
そうするさ
お前を
他の男の部屋に
住まわせたりしない
「泣いちゃいそうになるくらい
すごい勢いで…
みんなに」
あぁ…
なんで
こんな話を
聞かなきゃいけねーんだよ…
てか
みんなって
なんだよ
意味わかんねーよ
「僕が
いけないんだから
仕方ないんですけど…」
「ちょっと待て。
なんでお前がダメなんだよ。
そりゃ
攻められるのは
理解できなくもねーけど
みんなでお前を攻めるとか
そりゃねーだろ」
「だって…
もう大人だし
しっかりしなきゃいけないのに
頼りっぱなしで
大事な人だからこそ
そーゆーとこ
ちゃんとしなきや
だめだって
みんなに
叱られたんだ」
ん?
何の話だ?
「真琴」
「はい」
「叱られたとか
攻められたとか
いったい
なんのことなんだ?
そもそも
なんでお前は
アパートに
戻りたいんだ?」
小説家のくせに
天然な真琴が
主語無しでしゃべるのは
いつものこと
俺は大抵
予測変換で話を聞いてるが
今日の予測変換は
どうやら
間違ってるみたいだ