君を好きにならない
第9章 別れ
《bar slow》
「やだ、それ本当?」
「あぁ…ほんとだ。
まいったよ…」
「……」
さすがのオネェも
苦虫を噛み潰したような顔で
言葉を失った
それから
いつものジンをグラスに注ぎ
「おごり」
って言いながら
俺の前にグラスを置いた
「ありがとな」
「ううん」
「……」
「まだ…引っかかってるのよね?」
「まぁな」
「忘れちゃえばいいのに」
「そうできればな…」
「うまくいく可能性だってあるのよ?」
「果てしなく
ゼロに近いけどな」
「(苦笑)」
オネェも分かってるんだ
ノンケを手に入れることは
どれほど困難かってことを
だからオネェは
それ以上
俺に
頑張れ
とも
どうにかなるわよ
なんてことも
口にはしなかった