君を好きにならない
第10章 帰る場所
「あ、司さん!」
仕事の帰り
マンションのすぐ近くで
俺は声をかけられ
振り向くと
嬉しそうに近寄る
マサシが目に入った
「おぉ、マサシか」
「仕事の帰りですか?」
「あぁ。
お前、久しぶりだな。
最近、slowに顔出さねーじゃねーか」
あんなことがあって
俺は少し
真琴と距離を置くようになっている
それに
オネェと色々話がしたくて
最近、夜slowに出かけることも多い
けど
slowで
マサシに遭遇することは
ほとんどなかったんだ、
「あー、ちょっと忙しくて」
「なんだ。
男でもできたのかと思ったよ」
「気になります?」
「は?」
「気にかけてくれてたら
嬉しいんですけど」
「じゃあな」
「あ、ちょっと!
待って下さいよ、司さん!」
マサシを置いて
帰ろうとすると
マサシは俺を追いかけてきた
「司さん、相談したいこと
あるんですけど
少しだけ、時間ありませんか?
食事、おごります。
あ、時間ないなら
お茶でもいいんですけど…」
いつになく
マサシは真面目な調子で
妙な違和感を感じた
「なんか…あったのか?」