君を好きにならない
第10章 帰る場所
「どした?
実家に帰って
結婚急かされたりしたのか?」
「あー…まぁそうですね…。
そんなに焦る歳じゃないと思うんですけど
田舎はみんな結婚早くて」
「よくある話だ」
「司さんは…どうしてるんですか?
親とかは
知ってるんですか?」
「いや、言ってねぇ。
だから
いいアドバイスとかは
できねーと思う。
ごめんな」
「とんでもない!
他の人がどうしてるのかってことが
聞きたかったから
言ってても言ってなくても
どっちだってかまわないんです」
「なら…よかった」
「友達にも?」
…友達…
「あーそーだな。
言ってはねーけど
バレてるかも知れねぇ」
「そうなんですか?」
「あぁ。
元々親にも昔のダチにも
隠してたんだけどな
わりと仲良かった
昔のダチに
バレちまって…
それから
そいつとは音信不通なんだけど
そいつが喋ってたら
噂は広まってるだろうな」
「広まってるかどうか
司さん、知らないんですか?」
「知らねぇ。
あれから
一度も実家には帰ってねーし
昔のダチに
連絡もとってねーんだ」
「そう…なんだ…」
「がっかりしたか?」
「がっかりなんてしてませんけど
ちょっと…びっくりしました」
「…そうか」
「司さんは
いつも堂々としてて
なんだろ
勝手なんですけど
頼りになるなって
思ったりしてて
だから…」
「そんなことねーよ」
「え?」
「知られるのが怖くて
誰にも言えなくて
弱気で
だから
slowみたいな店に
行ってんだ。
あそこにいる奴らには
男が好きってことを
攻められたり
しないからな(苦笑)」