君を好きにならない
第10章 帰る場所
マンションに帰ると
真琴は浮かない顔で
パソコンとにらめっこをしていた
どうやら
また
筆がストライキをしてるみたいだ
「どうした
今日も神は降臨しなかったのか?」
「はい…
全然書けなくて…」
「外の空気でも
吸ったらどうだ?」
「吸いました。
ベランダに何回も出ました。
ベランダから外見てたら
向井さんが帰って来てるの
見えたんだけど
男の人と
どっかに行っちゃいました」
「え?あ、あぁ
ちょっと知り合いに会って
相談にのってたんだ」
マサシのことか
「やっぱり知り合いだったんだ。
僕
前にもあの人と向井さんが
話してるの見たことあるし
あの人が
マンションの近くに
一人でいたのも
見たことあるんです」
一人で?
「そ、そうか。
職場がこの近くらしいから
よく通るんだろうな」
「ふーん。
そうなんだ…」
「そんなことより
仕事、大丈夫か?
ちょっと前まで順調だったから
締め切りまで
余裕ができたけど
このままのスピードだと
余裕なくなるどころか
締め切りも
危ういぞ」
「……ですよね…」
真琴は
頭を両手でかきむしって
ソファに
寝転がった