君を好きにならない
第12章 好きにならない
「向井さん、ジン飲まないんですか?」
「あぁ、ビールでやめとくよ」
「僕、飲んでもいいですか?」
ビールで
いい気分になってそうな真琴が
ジンを飲むと言い出した
「もう酔ってるだろ?」
俺が飲んでるジンを
時々舐めることはあったが
真琴が自分のグラスに
ジンを注いだことはない
「まだ・・眠れそうにないから」
真琴の表情は
ぼんやりしてるのに
眠れないという
まぁでも
とにかく眠った方がいい
酔って気持ち悪くなったとしても
眠れるなら
その方がよさそうだ
そう思った俺は
グラスにワンフィンガーのジンと
大量の氷を入れて
真琴に手渡した
「ゆっくり少しずつ飲めよ」
「・・うん」
瞼が重そうな真琴は
相変わらず
笑うことなく
ジンに口をつけて
顔をゆがめた
飲めもしないのに・・
「向井さん・・今日は?」
「今日、なんだ?」
「・・いる?」
「いるけど、なんだ?」
「ううん」
「なんか用か?」
「・・いい」
ジンで一気に酔いが回ったか
真琴は
うつらうつらしながら
会話もおぼつかない
「仕事のことか?」
「・・・・いい・・」
「真琴?」
「・・・・・・・」
しばらくして
真琴は
テーブルに突っ伏して
眠ってしまった
グラスに
ほとんどジンを残したまま