君を好きにならない
第12章 好きにならない
それから俺は
少し前からの真琴の様子を
オネェに話しながら
酒を飲んだ
酔いたくて
酔いたくて
酔わないと
帰れなくて
それなのに
何故か今日は
酔えなくて・・・・
その時だった
「司さん、こんばんは」
店にマサシが現れて
俺の隣に座った
座った途端に
オネェがマサシに
目配せしてるところを見て
俺は
オネェがマサシを呼んだんだろう
と思った
「昨日も今日も
司さんに会えてラッキーです」
「バレバレなんだよ。
オネェが呼んだんだろ?」
「あらいいじゃないの。
同類と話したかったんでしょ?
じゃ、マサシくん
ちょっと司ちゃんのことよろしくね。
今日はバイトが少なくて大変なの」
そう言ってオネェは
カウンターを離れた
「なんか…ありました?
俺、何でも聞きますよ。
真琴さんのこと…ですよね」
マサシは
そう言いながら
心配そうに俺を見つめた
やめろよ
そんな風にされたら
寄りかかりたくなる
「まぁな…。
真琴も
俺なんかと一緒には
生活できそうもねぇよ…」
「そう…ですか…」
マサシは
まるで自分が辛い思いをしてるみたいに
顔を歪めた
「結局
やっぱ俺らは俺らなんだよ。
ま、仕方ねぇし
そんなことは
…元々…」
そこまで言うと
マサシが俺の背中に手を置いた
その手に気付いた瞬間
俺の目に
涙が込み上げ
あふれそうになった
マサシは
それに気付いてるのか
気付いてないのか…
小さな溜息をついた
「好きな人を忘れるのは
簡単な事じゃないけど…
相手がゲイなのに
叶わない恋やってる方が
もっと辛いですよ(苦笑)」
「マサシ…」
確かに
マサシの言う通りだ
ノンケなら
仕方ない
俺達は
そうやって生きてる
「大丈夫です。
俺は司さんを
好きにならないけど
心癒えるまで付き合いますから!
なんなら
俺と一緒に住みますか?
一人で帰るのが
寂しいなら」
マサシは
少し照れながら
そんな事を言った
照れるなら
言うなよ
そんなこと。
「寂しいのはお前だろ?」
「あ、はい(笑)」
「なぁマサシ
ちょっと相談にのってくれないか」
「もちろんです」