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君を好きにならない

第12章 好きにならない


「え?」



「さっき一緒だった人が
恋人なんですよね。
でもどうしても
話したいことがあるんで
ほんとその人には
申し訳なかったんだけど」



「あ・・」


そこで
エレベーターのドアが開き
外には他の住人が立っていた



「とりあえず
家で話そう」


そう言って
俺が先にエレベーターを降りると
聞かれたくない話題だと察したんだろう
真琴は黙って
俺の後に付いてきた


恋人っていうのは
マサシの事を
言ってるんだろう

勘違いされるようなことは
何もしてねーけど



「とりあえず座れ」



「・・はい」



憮然とした表情で
ソファに座った真琴からは
酒の匂いがした


「まず
お前の質問に答えてやる」


「・・・・」


「さっき一緒のいた男は
恋人じゃねぇ」


「・・・・」


納得いかないのか
真琴からの返事はなく
うなずくことすらしない

カチンときた俺は
少し声を荒げた


「いくらゲイでも
一緒にいただけで
付き合ってるとか思うなよな」


すると真琴は顔をあげて
一気にまくしたてた


「さっき一緒にいるとこ見ただけで
そんなこと言ってないです。
あの人、何度もこの近くで
見たことあるし
昨日泊まったのも
あの人のとこなんじゃないですか?
今朝スーパーから
一緒に帰ってきたのも
ベランダから僕見てたし
さっきもバーで一緒だったんですよね?!」


「は?
さっきバーでって
どういうことだよ」


真琴の顔は赤く
こぶしを強く握り締めていた


「バーから一緒に出てくるの見たんで」



「おい真琴
バーから一緒に出てきたら
付き合ってんのか?」



「・・・」



「あの店はゲイばっか集まるとこだけどな!
そんな関係のやつばっかが
集まってるわけじゃねーんだ!
ゲイにしか理解できない話をしたり
俺みたいに普段ゲイだと隠してるヤツらが
自由になりたくて行ったりもするんだ。
知ったような口きくな!」



その言葉の後
部屋は静まり返り

俺はふと
我に返った


何熱くなってんだ俺は

何に腹を立ててんだよ


真琴に
マサシが男だと
疑われただけなのに。

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