君を好きにならない
第13章 追跡
マサシの足音を
ドア越しに聞きながら
俺はその場に
立ち尽くしていた
マサシの足音が
聞こえなくなっても…ずっと。
いい奴だ
マサシを好きになれれば
どんなにいいだろう
このまま
真琴を好きでいるわけにも
いかない
だったらマサシと…
頭の中では
そう思ってるのに
真琴から連絡がこないかと
携帯がずっと
気になっている自分もいるんだ
はぁ…
マサシと別れて
しばらくして
どうすればいいのか
分からないまま
俺は
リビングへと足を向けた
暗く寒い部屋に
電気を付けると
朝
俺が出かけたままの
リビングが目に入った
そこに
真琴はいない
思わず込み上げる悲しみを
胸で押し殺しながら
俺はその足で
寝室へと向かった
確かめたいことが
あったからだ
昔、アイツは
俺が仕事に出かけた後
全ての荷物を運び出していた
真琴も
そうなのかどうか…
俺は
寝室の前で
一度深呼吸して
ドアを開けた
真琴…っ…
寝室の真琴の荷物が
触れられた形跡はなく
まだ
ほとんどの荷物が
置かれたままだった
どうしてだろう
荷物があるのに
涙が止まらねぇ…
もし
荷物が無くなってたら
と思うと
帰るのが怖かったくせに
真琴が
この部屋に来てもいないことが
わかると
辛くてたまらなかった
真琴が
今何をしてんのか
ココに来ることさえ
嫌になったのか
今日
荷物を取りにも来ないで
何やってんのか…
真琴のことが
知りたくて
たまらなくて
俺は
鳴らない携帯を握りしめて
涙を流した