君を好きにならない
第14章 好きの意味
それから俺達は
マサシのアパートを出て
タクシーを拾い
マンションへと急いだ
真琴は
俺に叱られると思ったのか
さっきのは
なんだったんだ?と思うほど
ずっとおとなしくしている
聞きたいことは山ほどあるが
タクシーとはいえ
人前で問いただすわけにもいかず
俺と真琴は黙ったまま
マンションまで帰った
「突っ立ってないで
まぁ、座れよ」
「…はい」
真琴が居なくなって
たった一週間しか経ってないのに
真琴がこの部屋にいるのが
ものすごく久しぶりに感じた
なんとなく
ソワソワしている真琴に
座るよう促したが
本当は俺も
妙に落ち着かなくて
台所に向かい
冷蔵庫から缶ビールを二本
手に取ってから
リビングに戻った
「飲むか?」
ソファに腰を下ろし
少しうつむいている真琴に
缶ビールを渡すと
「うん・・」
真琴はビールを受け取り
すぐに蓋をあけて
ビールを一口飲んだ
「・・座っていいか?」
そう聞いたのは
まだ
真琴から
あの言葉の意味を
ちゃんと説明してもらっていないからだ
万が一
俺の想像以外の意味だとしたら・・
嫌だろうから
「も、もちろん」
俺は
その返事に安堵し
少し間を開けて
隣に腰を下ろし
ビールを一口飲んだ
真琴が居る
たったそれだけで
何も変えていないリビングが
いつもより狭く感じた