君を好きにならない
第2章 真琴!死ぬなよ!
「すみません。
止まんなくて
ちょっとだけこのまま
ほんとすみません」
「いやそーじゃなくて
それなんだっつってんだよ俺はー」
俺が帰ってきたってゆーのに
真琴は振り向きもせず
紙にペンを走らせていた
いや、それは
かまわない
全くもって
問題ない
ある意味
大歓迎だ
でもそれだけじゃない
真琴は
俺の布団を寝室から持ち出し
まるでコタツに入ってるかのように
腰まで布団を掛けて
紙に向かっていた
どんだけコタツフェチなんだよ
「………」
え?シカト?
俺の質問に答える余裕は
真琴にはないみてーだ
「おーい、返事しろー
でないと
お前のパソコン壊すぞコラ」
「あ!あ!
それ、待ってたんです!!
ほんと、お帰りなさい。
ほんと、ありがとうございます」
真琴は急に立ち上がり
俺の手からパソコンを奪った
ちょっとムカついたが
真琴の顔を見ると
一日心配してただけに
ホッとする俺がいて…
「熱は?」
「平気です」
そう言ながら
真琴は前髪を左手で書き上げると
ずいっと数センチ
俺に近づいた
え…
は、測れって?
真琴の無意識の誘惑だ
ほんと
なんなんだよこいつ。
なんて思いながらも
その誘惑に
いとも簡単にのってしまう俺は
なんとも思ってねー振りをしながら
おでこに手を当てると
真琴はスッと瞼を閉じた
目とか…閉じんなよ…
お前
マジで誘ってんのか?
そんなわけねーことは
わかってるのに
俺は条件反射のように
無防備な真琴の口元に
視線を落としていた
どうすることも
できねーのに…。
「もう大丈夫ですよね?」
「あ、あぁ、もう
熱は無さそうだ」
「よかったぁー
じゃあ、仕事もしていいですよね?
向井さんに説明したいこと
いーっぱいあるんです。
向井さん、今日聞いてもらえますか?
パソコンのだけじゃなくて
今日考えたのも聞いてもらいたくて
とにかく一つにしぼんないと
先に進めないし
あ、やべ!
今思いついてたフレーズ忘れちまう!
早く書かないと…」
真琴はそこまで言うと
突然俺から離れて
また
コタツのような布団に
足を突っ込み
猛烈に
きゅんきゅんしている俺を
放置した