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君を好きにならない

第3章 誘ってんのか?


触りたい


その
柔らかな髪に触れて

「よくやったな」と



抱きしめてやりたい



お前は気付いてないかもしれないけど



あぐらをかいた俺の膝に
正座してるお前の膝

あたってんだ



そんなことが
気になるくらい


お前のこと…


「ええっ!!
え、向井さん
俺、今褒められたんですか?!」


クスッ(笑)

気付くの遅いっつーの。


「あぁ、褒めたんだよ俺は。
まぁよくやったな。
この中には次回作候補もある。
今回の仕事がうまくいけば
次回作の依頼も夢じゃないぜ?」


「う、うわ…
マジですか?!
本当に?
向井さん、嘘じゃないですよね!ね!」

真琴はガシっと
俺の肩を掴み
真顔で俺を真っ直ぐに見つめた


「嘘じゃねーよ」


「ほんとにほんとに
嘘じゃないですよね!!」


「ちょっ、真琴」


お前


顔、近いってば


「よかったぁ〜…」


その言葉とともに
真琴の手からは力がぬけ
頭を下げてうなだれたかと思うと
うつむいたまま
頼りない声で呟いた


「俺…

このまま田舎に帰るとか
できなくて…

なんとか稼ぐようになんないと
…帰れなくて…」


家出同然なんだから
そうだろうな

けど…


「安心すんなよ?」


真琴は
俺のその言葉に
猛烈なスピードで反応し
顔を上げて俺を見つめた


「完成するまでは分かんねーからな?
今んとこまでは80点。
こっから先、0点になるか
100点になるかは
お前次第」


そう言い終わると
真琴は
薄い唇にギュッと力を込めながら
一度大きく頷いた


「よし。
じゃ、コーヒーショップのプロット
もう一回じっくり
目を通すからな?」


「よろしくお願いします!」

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