君を好きにならない
第4章 触ってみてもらえますか?
「は?
何言ってんだよ
別に俺はガムが好きなだけで
いつでも噛んでるし
緊張してるわけでもねーし・・」
さっきガム噛んだら
ちょっと笑ってたの
そーゆーことか・・・
「はい(笑)わかりました。
ガムが好きなだけですもんね?」
真琴は
イタズラに笑いながらそう言って
八重歯を見せた
「そ、そーだよ」
「そもそも
こんなこと頼んじゃってる
僕が悪いんですけどね。
ほんとすみません」
い、いや
『こんなこと』に関しては
むしろ感謝してるけど
「気にすんな。
こーゆーこと、たまにあっから」
ほんとは
全くしないけどな
こんなこと
「じゃ・・よろしくお願いします」
「お、おぅ」
すると真琴は
台所の流しの前に立ち
少しうつむいて
前髪で顔を隠した
まずは
ごくごく普通に
真琴の斜め後ろに立ち
声をかける
「普通こんくらいだ」
「はい」
そして一歩近づくと
突然距離は縮まる
若くて体温の高い真琴の熱を感じそうで
俺は一瞬息を飲んだ
「どうだ?」
「ん~・・・・」
真琴は少し考え込んだあと
スポンジを手に取り
流しに置いてあったグラスを洗い出した
「何かに集中してたら
全く気にならないかも・・
そのままグラス持ってる僕の手
触ってみてもらえますか?」
「あ、あぁ、わかった」