隣は空席のまま…
第9章 女が強い訳
「いらっしゃ――――…!彩芽?今日は、病院でしょ?」
店の入り口が開くとホタルの独特な言い回しの挨拶が耳に入ってくる
「ホタル――――…なんでカウンターに出てるのよ…一気に夜の雰囲気がするじゃない!」
「マスターに頼まれて留守番よ!
それより、彩芽!病院は?」
私は、横からカウンターの中に入るとカバンを置きエプロンを着ける
何だか、仕事モードになって背筋が伸びる思いだ
「行ってきたわよ――――…順調だって、次の診察2週間後だから…その時は、また――――」
ホタルは「はい、はい」と、笑いながら私に水を差し出す
「順調なら、良かったわ――――」
昼間のホタルは女装をしない――――…見た目も男の人
綺麗な男の人――――…ちょっと…羨ましい…
私は、受け取った水を口に運ぶ
「何、見てるのよ!お金取るわよ!?」
口が悪いのとか…言い回しは…どこまで行ってもおネエだけどね
「そうだ!妊娠中とか授乳期はカフェインはとらない方がいいらしいけど…彩芽、珈琲…大丈夫なの?」
豆の選別をする私にホタルが心配そうに聞いてくる