委員長はエッチでした
第12章 真夜中のおしおき
だけど
ずっと気になっていた。
今だから思う。
━━あの時から
あいつは
普通じゃない。
━━イカれてる。
前に公園で
彩香と亮くんの会話を
偶然聞いたから
何があったのか
分かっている。
だから
こんな朝に
こんな場所にいる
結城さんを見て
嫌な予感がした。
亮のいるアパートの
近くの公園に
いったい
何の用事があるんだろう。
注意深く
公園に近付こうとして
「あれっ?
おはよう、翔矢さん、君もゴミだし?」
少し呑気そうな
亮の声が
背中にかけられて
ちらりと
公園に視線を映す。
━━いない?
「……?
翔矢さん?」
旅行カバンを持った亮が
怪訝な様子で
俺を見ている。
「……ああ、いやぁ、おはよう亮くん。
そのカバンはひょっとして、
彩香と遠出でもするの?」
何の気なしに聞いて
俺の言葉に
亮の顔が赤くなるのを見て
内心舌打ちしたくなる。
彩香の事は
諦めた訳じゃない。
ただ
亮と一緒にいる
彩香を見るのも
嫌いじゃない。
イラつくけど。
流石に
人の彼女には
ちょっかい出さない。
「うん、ちょっと温泉にでも行こうかなと。
彩香さん、今までそういうの、
行った事ないみたいだから……」
亮くんの
こういった
自然な優しさが
時々
憎らしいとさえ
思ってしまう。
羨ましいとさえ……。
ちらりと公園に
目を向けながら
俺はさりげなく
行き先を聞いてみる。
念の為だ。
この時の俺は
ただ純粋に
結城さんの存在が
危険だと
察知できたから
二人を助ける
つもりでいたんだ。
今から彩香を
迎えに行く
亮と別れて
アパートの部屋に戻り
簡単に荷物を纏める。
ベランダから見れば
結城さんが
亮の後ろから
そっと
付いていく姿が見えた。
公園の前に車が止まり
それに乗り込む亮。
多分おねぇさんの
車だろう。
高級そうな車。
タクシーに乗り込む結城さん。
俺は慌てて
家を出る。
走りながら
タクシーを呼んで
亮に教えて貰った
行き先をメモして
タクシーの運転手に渡した。
お金はある。
距離も遠くない。
ただ
胸騒ぎがして
それが俺に
行動させた。