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りる綴り Ⅱ

第3章 2017.04.01~

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傷だらけの “猫“ を拾った

その猫は、寒いのに薄いTシャツにハーフパンツで、靴すら履いていなくて

山道で見つけた時はそれこそ死んでいるかと思った

かろうじて呼吸を確認した時は本当にホッとした

ほっとけなくて、連れて帰って
汚れた体を綺麗に拭いて

ずっと閉じられた瞳が開いた時には、その光に惹きつけられた

俺を見て怯えてるくせに、どこか妙な力があった


「俺は…生きてるの?」
初めて発した言葉は、自分の生死の確認

だから “助かって良かったね“ と言おうとした矢先

「…死ねなかったんだ」

俯いて、ポツリとその猫は呟いた


…守りたいと思った

俺と大して年齢差のないこいつを、傍に置きたいと思った

何でそう思ったのかは分からないけど、離したくないと思ったんだ



そして拾って甲斐甲斐しく世話をして3ヶ月が過ぎる頃には


「ちょっと相葉さん!片付けてよね!」

散らかった書類を手に持ち、怒りを顕にする猫… “かずなり“ がいて

俺はすっかりこいつに振り回されるようになっていた

だけどそれが幸せのかたち

拾ったのは、きっと運命


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