誰も見ないで
第14章 文化祭
「だって小川さん、僕と話しながらたまに湊斗君の方を気にしてたから」
「それだけで……? 馬鹿じゃない」
小川さんの声が弱々しい
今、どんな顔をしてるんだろうか
「僕をダシにして湊斗君に近づいて、それが原因でいじめられるようになれば湊斗君は罪悪感を感じて自分の方を見てくれる……と、考えたんじゃない?」
瑞稀君の言葉にはっとした
小川さんのことが好きとかそういう感情は抜きにして、俺が原因でイジメが始まったことに関して罪悪感を抱いていたことは事実だから
上手く乗せられてた
のかな
「あんたに……何がわかんのよ……」
小川さんから絞り出すように出た声は、怒りか悲しみかで小さく震えている
「何にもしなくたって愛されるあんたに、何がわかんのよ!!!!!! 」
突然大きな声で自分の思いを爆発させた小川さん
それでも瑞稀君は冷静で
まっすぐ前を見据えたまま、淡々と話した
「例えどんな理由があったって、人を傷つけるのは悪いことだよ。ましてや木下さんみたいな他人を巻き込むなんて、絶対にしちゃいけない」
それに、と瑞稀君は怒りを滲ませた声で続ける
「僕が湊斗君に好きでいてもらう理由が何にもなくたって、絶対僕は湊斗君を誰かに渡したりしない」